京都カフェ散歩―喫茶都市をめぐる (祥伝社黄金文庫 か 17-1)本ダウンロード無料pdf
京都カフェ散歩―喫茶都市をめぐる (祥伝社黄金文庫 か 17-1)
本, 川口 葉子
によって 川口 葉子
3.9 5つ星のうち 14 人の読者
ファイルサイズ : 18.13 MB
内容紹介『京都は街自体が一軒の巨大なカフェだ』そんなことばに魅せられ、旅した67の喫茶時間。1000軒以上のカフェをめぐってきた著者、初の京都カフェ本。「京都」という慣れない街を迷子になりながら著者がみつけた67軒のカフェ案内。豊富なフォト&エッセイで綴られた、ちょっと贅沢な、大人のための「カフェ本」。オールカラー&エリア別マップつき。著者について文筆家&喫茶写真撮影家。約30 年にわたり1000 軒以上のカフェを訪れてきた経験をもとに綴るウェブサイト「東京カフェマニア」は、カフェ好きの間で広く知られる存在。書籍や雑誌、ウェブを舞台に、カフェに関するエッセイや記事の執筆等、幅広く活躍中。著書に『本のお茶~カフェスタイル岡倉天心「茶の本」』(角川書店)、『カフェとうつわの旅』(青山出版社)、『カフェの扉を開ける100の理由』(情報センター出版局)他多数。茨城県出身、南インド育ち。大学時代より東京在住。
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「すいませぇん。いっぱいなんですぅ」いつのことだっただろう。六曜社地下店を初めて訪れたときだ。河原町三条の交差点から文字通り地下へ降りる階段を降り切ると、もうそこは“店”だった。マスターと思しき人からそう断られた。なぜだろう、「なんだ、満席かよ」とは思わずに、「そうか、じゃあひと廻りした後でまた来てみるか」自然にそう思った。カウンターの向こう側にすっくと立ったその人の姿と物腰は、足を踏み入れた瞬間にもう私を虜にしていた。小一時間後に席を得た。柔らかな京ことば、いつもなら無遠慮なはずがなぜだかここでは密やかな東京弁、パソコンを打つ白人、本を読む学生。もちろん一杯のコーヒー。この店に充満するすべてが好ましい。そしてその人は、終始同じ様子で立ち続け、ネルのドリッパーに丁寧にお湯を注ぎ続けていた。これが私の、京都カフェ原体験である。その人が伝説の奥野修マスターだとはそのときは全く知らなかった。東京の本屋を歩いていて、いつものように「おや」と思った。手にとるとまさにその日に発行されたばかりの本だった。件の六曜社地下店も進々堂もイノダ本店も当然のごとく紹介されている。たかがガイドブックだが一応買っておくかぐらいの、見くびった気分で購入したのだが、一読してその不遜な気分は叩きのめされた。Web情報全盛の今日、ガイドブックの類も薄く軽い。旅に関するものでも店に関するものでも、「検索」可能な情報は羅列されているけれども、歴史や文化についてまで詳しく書かれたものは姿を消している。ましてや街や店を構成する人の人なりや人生にまで踏み込んだ記述には近頃お目にかかることがない。本書では、まずオーナーやマスターの人となりと人生を通じてお店の歴史が語られる。創業者が戦地ラバウルでコーヒー栽培に携わったのがきっかけで始まった小川珈琲。フランソワ喫茶室は有形文化財となった建物が観光客に人気の店だが、本書では先代が反戦派の知識人を支援したかどで治安維持法違反に問われ投獄された経緯から語られている。また、紹介されている名店の多くのオーナーが、熟練の珈琲作り職人であるばかりでなく、ミュージシャンなどの文化人である例が多いこともまた、この街とこの街のカフェ文化の彩りであることが本書を読めばよくわかる。この本の魅力はふたつあると思う。ひとつは、じっくり話し込んだインタビューに基づいているとこと。もうひとつは、著者自身の撮影による写真である。そのどちらにもインド育ちのカフェ評論家である著者の姿勢が読み取れる。1枚残らずが素晴らしい写真である。特徴は陰があること。撮影技術的に言えば、大口径レンズとスローシャッターを用いストロボを使っていない。限られたポイントにのみ焦点が当たり、そのポイント以外はだんだんとぼやけて美しい背景となって映るのもこの手法の特徴だ。光を当て得るもの描き得るものには限りがあること、それ以外のところに無限の深みとしての陰があるのだという、対象に向かう傲慢ではない真摯な姿勢が表れた手法である。無遠慮なストロボの閃光は静かで落ち着いた空気を突き破るものでもある。相手との丁寧な会話やその場の雰囲気を尊重する著者が、最初から意図的にその撮影手法を用いたのか、あるいは結果的にそういう空気を重んじる手法に行き着いたのかには興味があるところだ。暗がりの多い古都京都のカフェを写すのに、相応しい写し方になっている。いずれにせよ、カフェは文化であり、文化の担い手は人であり、その目の前の人の人生こそが歴史なのだと訴えるような、著者の丁寧で真摯な書き方と写し方には感銘さえ覚える。初めて六曜社地下店に行った時のことを思い出した。交わした言葉は二言三言に過ぎなかった。マスターはカウンターに立ち続け、ただ珈琲を出し続けていた。それなのに私を魅了し、いまでも惹きつけて止まない魅力は何だったのか、読後の今はわかる気がする。喫茶店業にかぎった話でなく、いかなる“業”も、営む者が凛とした矜持を持って立ち続けるならばもはや文化と言っていい。奥野マスターの立ち姿を思い起こしてそう思う。喫茶都市京都のカフェ文化を形成する無数の物語。珠玉の文と写真でそれを紹介したガイドブックです。名著だと思います。
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